鹿児島市内から車で1時間弱。薩摩半島の南部に位置する知覧は、武家屋敷群や知覧特攻平和会館など歴史や観光のまちとして知られますが、市内の各所には見渡す限りの田園風景が広がる農業のまちとしての顔も持ちます。

今回は市の基幹産業でもある「知覧茶」のコーディネートを通じ、自身のなりわいづくりに取り組む創業型人材を募集します。
茶生産日本一のまちの現状
南九州市は平成19年に頴娃、知覧、川辺の3つの町が合併して誕生しました。茶どころの町同士が一体となったことで、南九州市は市町村単位で日本一の茶生産地となりました。茶の流通は旧町それぞれの銘柄でなされていたことに課題がありましたが、関係者による長年の協議を経て平成29年に悲願の銘柄統合を果たし、統一ブランド、知覧茶のもとで新たな歩みが始まっています。

市内の700軒以上の農家が生産に励む知覧茶は、広大な台地が広がる地形を活かし農作業の機械化が進んでいることや、市内に点在する100軒を超える自社工場で農家自らが加工し出荷するなどの独自の強みを持ちます。しかしながら人口減少や若者の急須離れにより長きにわたり茶の消費減少と販売価格の低迷が続く中で、主な販路はJAや茶商などの流通業者が主であり価格決定は市場動向に委ねざるを得ないなど、厳しい環境下にあるというのが実情です。
新たな挑戦
そうした状況のもとで、新たな挑戦も始まっています。
これまでも東京や大阪などの都市部に出向いての茶の振る舞いなど幅広い層に発信するPR活動を行ってきましたが、昨年は首都圏の日本茶カフェのオーナーらをターゲットと定めた知覧茶体感イベントを開催、消費者と知覧茶を繋ぐコアな発信者に知覧茶のファンとなってもらうプロジェクトを手掛け、手応えを得ました。また英語やフランス語にも対応したECサイトを構築し、海外向けにも直接発信を図る取り組みも始めています。
今回の隊員の受け入れ窓口となる市役所茶業課の有薗琢也さんにお話しを伺いました。

「茶業課が担う茶業の支援という仕事は、これまでどちらかと言えば農家への生産技術の指導などが中心でした。しかしながら今後は頑張る農家との連携を深め、そうした農家と消費者を繋ぐという、新たな商流づくりがより重要になります。ECサイトの構築もそうした取り組みの一つでしたが、香港、ドイツ、オランダなどからの問い合わせがなされるなど、新たな流れが生まれつつあります。もっともまだまだ出来ていないことはたくさんありますし、消費地のニーズを把握し新たな次の一手を打つという感性や行動力は私たち行政職員には不足しがちなものであり、こうした役割を隊員には担ってもらいたいと考えています。」
コーディネートをなりわいにする
隊員のミッションは、生産地である知覧の茶農家らと消費地の売り手や消費者を繋ぎ、新たな商流づくりに携わることとなりますが、そこに留まらずそうした活動から稼ぎを生み出し、自身の仕事とすることを目指しています。言わば、「知覧茶のコーディネートをなりわいにする」ことがミッションです。
着任した隊員は南九州市茶業振興会に所属し、市内の茶農家や行政担当者らとの関係構築を図りつつ、まずは知覧茶の発信業務と新に立ち上げたECサイトの運営実務に携わって頂きます。そこで培った基盤を活かし、その後自身のなりわいづくりに取り組むこととなります。ECサイトでの販売を担ったり、サイトを通じて問い合わせがあった海外客とのビジネスを仲介したり、生産者からの依頼で消費地向けの販促活動を請け負うことなどを想定していますが、その他にもいろいろな可能性があるかと思います。

茶業課と地域おこし協力隊で企画運営したPRイベントの様子
このため着任する隊員には、サイト運営のスキルや経験、語学力があることが望ましいことですが、むしろ行政や茶農家とのスムーズな連携を図ったり新たな挑戦に励む積極性やコミュニケーション能力の方が大切なものと考えています。
新たな商流づくりのコーディネートは決して安易な道ではありませんが、市内最大の産業の周辺にはさまざま新規ビジネスの種があり、なりわいづくりに向けた挑戦には適したフィールドであるとも言えます。
制度づくりの大切さ
隊員は、南九州市茶業振興会に所属し、着任当初はここを拠点に活動しますが、その後段階的に自身が希望する勤務地に移行する体制としています。茶業振興会の事務は市役所茶業課が担っていますので、市と二人三脚での活動スタートとなりますが、あえて外部団体所属やその後外部拠点に移る体制とした背景を、市役所ふるさと振興室で協力隊制度の運用に関わる上野晋作さんはこう説明します。

「隊員にとって、市役所職員と同じ職場に身を置き関係を築くことの意義はあるものの、任期満了後のなりわいづくりを目指す上では、いつまでも同じ環境のもとで働き続けることは、望ましいことではないと感じています。当市で活動する先輩隊員も、まちづくに取り組むNPO法人や、観光振興やガイド運営に取り組む地域団体に派遣する方式としています。隊員の意向を尊重し活動の自由度を高めるために外部団体と連携したり、役所外勤務の体制を提供することは、当市の基本方針となりつつあります。」

南九州市にはこれまで4名の協力隊員が着任しています。隊員として活動していた1名はこの3月の任期終了後、茶農家や地域で活動する方々を支援するフリーランスとして独立する道を選び、当市内を拠点に新たな歩みを始めたところです。また活動中の3名は、デザイン事務所を構えたり、宿や研修を担う会社を設立して社長に就任したり、自身と地域にふさわしい新たな観光ビジネスの立ち上げを模索する日々を送ったりと、創業を見据えた活動を着々と展開しています。そうした先輩隊員との交流は、隊員の挑戦を力強く後押ししてくれるはずです。
隊員のサポート体制
南九州市と連携し、市として最初の協力隊員を受け入れた民間のまちづくり団体、NPO法人頴娃おこそ会の加藤潤さんはこう話します。

「隊員導入のポイントは、隊員の受け入れを希望する行政側のニーズと、隊員自身のなりわいづくりの両立をどう図るか、ここに尽きます。この度も実際に隊員を受け入れの経験を持つ民間団体の立場から、行政担当者と隊員のなりわいづくりについても深く議論を交わしつつ制度づくりに関わらせてもらいました。また着任後も私たちがアドバイザーという立場で隊員と定期的な面談を行いつつ、さまざまな相談に乗ったり創業に向けたサポートを行う体制を採ることになりました。私自身も9年前にこの地にやって来た移住者ですが、何かに挑戦したい者がここで何かを実現し、地域や行政に感謝しつつこの地に住み続けることになれば、将来にわたって地域に大きく貢献することになります。協力隊制度は人づくりのための最大のツールです。だからこそ、地域として着任した隊員をしっかりと応援することで、まちづくりに関わる仲間、同志を増やしていきたいと考えています。」

知覧茶の世界に新たな風を吹き込みつつ、自身のなりわいづくりにも取り組めるやりがいのある仕事です。
そんな環境で挑戦したいと考える方の応募をお待ちしています。
募集要項
雇用関係の有無 |
あり |
業務概要 |
知覧茶の新たな商流づくりに取り組み、生産地と消費地との繋がりをコーディネートする業務。
当初は南九州市茶業振興会のスタッフとして、茶業関係者との関係構築に携わりつつ、段階的に知覧茶のナカとソトを繋ぐ取り組みに移行しつつ、任期終了後の創業を目指す。 1年目:茶業振興会のスタッフとして茶業振興会の事務所で勤務。知覧茶ECサイトの運用や、各種の茶業振興会が担う業務に従事する 2年目:茶業振興会との関わりを保ちつつ、外部に比重を置いた活動に移る。勤務地の所在は相談の上で決定 3年目:勤務地は茶業振興会の外に置き、任期終了後の創業や就業を意識した外部での活動を中心とする (業務のイメージ)
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対象 |
※その他,あれば望ましい要件 |
募集人数 |
1名 |
勤務地 |
南九州市
勤務先:南九州市茶業振興会(南九州市知覧町) ※南九州市から、茶業振興会へ派遣する勤務形態となります。 |
雇用形態・期間 |
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給与・賃金等 |
月額18万円 ※期末手当なし(年収216万円) |
勤務時間 |
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待遇・福利厚生 |
社会保険(雇用保険、健康保険、厚生年金)・労働保険(労災)
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申込受付期間 |
令和元年5月20日~6月30日 |
審査方法 |
(1)第1次選考(書類選考)
履歴書及び職務経歴書、加えて「なぜ本事業に応募したのか」「着任した地でどのようなことに取り組みたいのか」などを論文形式で提出してください。(400字詰め原稿用紙1枚程度) (2)第2次選考(面接) 第1次選考合格者を対象に面接を行います。詳細については、対象者に別途連絡いたします。選考の際の交通費等は応募者の負担とします。 (3)最終結果 最終結果は、電話もしくは文書で対象者に通知いたします。 |
参考URL |
備考 |
※令和2年4月からは、雇用形態の制度変更に伴い、月額支給額などの雇用条件等が変更になります。 |
お問い合わせ先 |
南九州市ふるさと振興室 担当:上野〒897-0392鹿児島県南九州市知覧町郡6204 電話:0993-83-2511(内線2092) FAX:0993-83-4469 |
応募方法
応募は、上記、南九州市ふるさと振興室までお電話ください。
じゅんさん
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