”感情をベースにつながるオンライン交流会”半歩先の歩き方MEET UPが、2022年1月14〜16日、21〜23日の6日間開催されました。

▼半歩先の歩き方MEET UPとは?

鹿児島県内6地域で”地域内外から人が集まる場”を運営している6組を「半歩先を歩いている方々」と定義し、1組ずつゲストに招き1時間半のオンライン交流会を開催。
前半では、様々な質問を元にゲストそれぞれの地域における半歩先の歩き方について伺いました。
後半では、参加者の皆さんと一緒にチャットを使ってゲストの思いを深掘りしたり、参加者からの質問にゲストが答えたり(場合によっては参加者が抱えている課題を共有したり)といった双方向的な交流を行いました。

▼ゲストのインタビュー記事を先行公開

交流会に先立ってゲストそれぞれの幼少期〜社会人生活の中で印象に残っていることや現在の活動に至るまでの背景をまとめた「半歩先の歩き方MEET UPにつながるインタビュー記事を先行公開しました。

本記事は、半歩先の歩き方MEET UP 当日のアーカイブ記事です。

当日の様子をそのまま記録した動画は、EIGOのYouTubeチャンネルからご覧いただけます。

YouTubeで半歩先の歩き方MEET UPのアーカイブ動画を見る

– 1/22のゲストは、霧島市 横川kito 白水梨恵さん

・白水梨恵さんのプロフィール

1987年 鹿児島市出身。高校卒業後、大学進学のために大分県別府市へ。サークル活動の中で出会ったまちづくりの世界にのめり込む。大学卒業後は、ITベンチャー企業に就職。しばらくしてNPO法人に転職し、地域に関わる仕事を開始。2014年に鹿児島県へUターンし、結婚と出産を経験。現在は霧島市横川町で、築90年以上の古民家を改修した「横川kito」を運営し「一般社団法人横川kito」の代表理事を務める。3児の母。

白水さんの事前インタビュー記事はこちら

※一部ライティングは、錦江町の地域おこし協力隊 友安麻里亜さんにお願いしました。

− 横川町について

霧島市横川町は中山間地域で、過疎化・少子高齢化が著しい町でもあります。

製造業・ハイテク産業の大手企業が多く進出しているエリアでありながら、人口は3600人ほど。

自然や歴史が豊かで、桜の名所「丸岡公園」や写真スポットで人気の大隅横川駅が有名です。

霧島市の有名観光スポットや大型ショッピングモールへそれぞれ車で片道30分、鹿児島空港へ行くにも15分とアクセス良好。

とはいえ、世代間交流が減っていたり、進学や就職で町を出る人が少なくなかったり。空き家も年々増えているそうです。

横川kitoについて

横川の人や町の魅力に惚れ込んで、自分の子どもの地元にしたいと思った白水さん。

「魅力のつまった町が廃れてゆくのは非常にもったいない」と観光スポットの大隅横川駅前通りを活用し、人が集える場所づくりに取りかかります。

横川kitoという名前には、

横川町周辺エリアの活性を「企図(きと)」すること、

子どもたちの「帰途」の風景を守っていきたいといった願いが込められています。

− 「この町に住みたいと思っているし、そういえばカフェやったことあったし、やるか」

お店をやろうと決める約1ヶ月前、仕事で大隅横川駅の保存活動をしている任意団体へインタビューすることに。

これが白水さんの転機となりました。

「横川駅は写真スポットとして有名だが、駅前通りがシャッター街となっている。横川の商店街を活かして町にお金が落ちるような動線をつくりたい」

そんな保存会の思いに共感し、横川町で起業することを決意。町の人と5ヶ月かけて物件を探しました。

だんだんと協力者も増えていって、地元や地域外の方々総勢50名以上の方々と共に1年間かけてリノベーションを行いました。

そうして2021年4月にカフェをオープン。

訪れるお客さんの約半数が市街地からで、「横川kitoをきっかけに初めて横川に来ました」というお客様も少なくないそうです。

− 「地元の人たちを素直に『かっこいいな』と思える私はすごい幸せだと思うんです」

町の今後に関わる会議の呼びかけには、民間から行政の方まで様々な人が仕事終わりに集まるそう。

町づくりで本当に大切にしたいアイデアには共通認識があり、横川町はチームワークが良いと感じているようです。

横川kitoや白水さんへの質問、コメントなど

・横川町の暮らしについて

日常生活を送る上では不便な面も。町内にスーパーがなく、最寄りのスーパーまでは車で約20分ほどかかり、普段の買い物に困ることもあります。

病院(特に小児科)もないので30分かけて通わなければならない場合も。

ただ、買い物はコープの宅配を利用したり、地元の方からお米や野菜をたくさんいただくのであまり苦労は感じていません。

何より、不便さを上回る地域のあたたかさがありますね。地域みんなで子どもを育てていく雰囲気があるので子育てもしやすいです。

 

・動画の中で白水さんの後ろに映っている方が気になります!

映っているのは、横川町出身でUターン移住した前田さんですね。店の改修や運営などkitoと深い関わりを持っています。

横川kitoの店休日にはチャレンジショップとして、不定期で駄菓子屋さんを開いています。

おかげで横川kitoは、年齢関係なく地域みんなで楽しめる場所になっていると思います。

・横川kitoの集客で意識しているところはありますか?

kito自体のターゲット設定は細かく設定して、店作りやメニューの価格などを決めています。

横川町に人を呼びこめるようにすることが1番の目的で、今のところは狙いどおり市街地からのお客様に足を運んでいただいています。

・目的達成の秘訣はありますか?

手探りしながら少しずつですね。

写真好きな人をターゲットにして店作りをしていたり、近くにフォトスポットにもなっている大隅横川駅があることから情報発信はインスタグラムを中心に行なっています。

・コロナ禍で苦労したことはありますか?

蔓延防止対策もあり、客足が減った時期は不安でしたね。

でも近くにある役場支所の方々がテイクアウトをお願いしてくれたりと、地元の方に支えてもらって売上自体は伸びました。

kito以外でも地域の食堂などをみんなで支えようとする雰囲気があって助かりました。

 

・横川kitoのおすすめメニューを教えてください。

店内でスパイス調合したスパイスカレー。気まぐれでカレーの材料や味が変わる気まぐれメニューも。

他には、おやつや甘いものもおすすめですね。

kitoでは事業を始めたばかりのクリエイターを応援したいと思っていて、お菓子の卸専門の「かこの小包」から取り寄せています。

・横川kitoのフルーツサイダーがおいしいです!

季節のフルーツをシロップ漬けにしたものを関平鉱泉の温泉水で割っています。

子育て中でお酒が飲めないので、ノンアルコールのカクテルを作り始めたのがきっかけでお店でも出すようになりました。

・今後の事業や、これから取り組みたいことについて教えてください。

2021年はやりたいことを詰め込みすぎたので2022年は「腹八分目」が目標ではあるものの、今年はゲストハウスを皮切りに観光事業にも踏み込んで行く予定です。

町歩きの仕組みを整備したり、横川近隣の町歩きやドライブマップの作成に取り掛かっています。

 

・横川kitoという拠点×オンラインだとどんなことができそうでしょうか?

例えば、ゲストハウス。県内ではまだ少ない個室のコワーキングスペースをつくろうと思っています。

他にはまだ妄想段階ですけど、ラジオのローカル局やYouTube配信ができる環境も作っていけたらな、と。

 

・へこんだり挫けたりした時はどうしていますか?

へこむこともありますけど、桜島みたいな感じかもしれないですね。小出しに弱音を吐いて持ち上がる、みたいな。

愚痴もこぼすけど、マイナスな話だけで終わらせないよう気をつけています。

周りには「梨恵さんも弱音吐きながら頑張ってるから自分も頑張ろう」って思ってもらえたらいいかなと。

 

− 新しい挑戦。来春にはゲストハウスをオープン予定

2022年春のゲストハウス開業を目指して、クラウドファンディングにも挑戦しました。

ゲストハウスのコンセプトは「霧島市の過去と未来をアートでつなぐ」

温泉とホテルで完結してきたこれまでの霧島の観光スタイルから、温泉や横川駅などこれまでの観光地を楽しみつつ、表現やアートに触れて感性豊かに味わえる霧島の魅力を再発見できる拠点にしたいと考えています。

さいごに

横川町の町づくりメンバーには求心力や熱さがある。地域活性に義務感なく本気で楽しんで取り組んでいる姿に惹かれる人も多い。

一方で白水さんも同じくパワフルで、たくさんの人を寄せ付ける力がある。

「応援してくださる方が集まってくれるのが楽しい。一緒に何ができるかな」と、

画面の向こうでニコニコと話す白水さんの熱に元気をもらった方もいるのではないでしょうか。

時間をかけて町を守り続けてきた地元の人々の声に耳を傾けながら、

「町のために楽しみながら何ができるかな」と、第一線で町づくりに取り組む白水さんの話はとても参考になりました。

 

(ライター:友安麻里亜)

− 関連リンク

6地域のゲストの事前インタビュー記事を見るYouTubeで半歩先の歩き方MEET UPのアーカイブ動画を見る

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半歩先の歩き方MEET UPは、鹿児島県から「つなぐ・つながる連携の場づくり事業」を受託したNPO法人頴娃おこそ会が実施いたしました。