頴娃(えい)に行ってみたくなる景色を提案する。頴娃の魅力を記録するをコンセプトに、EIGO編集部が、鹿児島県頴娃(えい)町で暮らす人々を訪ねて質問を重ねる「Ei Talk/えい会話」

記念すべき初回のゲストは、ちかさん・ゆうせいさん夫婦です。

ちかさんとゆうせいさんのご紹介(プロフィール)

福澤 知香:ちかさん

1986年 鹿児島県鹿屋市生まれ。高校卒業後、大阪にある旅行系の専門学校に入学。その後、旅行会社に入社し3年半ほど働く。その中で「地域の人と一緒に作る観光」を考えるようになり、高知県の観光協会に転職。さらに県内の観光NPOでも経験を積み、2015年に頴娃町へ移住。まもなくして「暮らしの宿 福のや、」を開業。”頴娃を暮らすように旅をする”をコンセプトに、頴娃町を訪れる人々を歓迎している。

瀬川 祐星:ゆうせいさん

1986年 お茶農家の次男として、南九州市頴娃町で誕生。高校卒業後、就職のために愛知県へ。大手ガラスメーカーで3年ほど働いた後、地元である頴娃町へUターン。家業であるお茶の栽培に取り組むものの、元々お茶が好きではなかったことから進路変更し、園芸(野菜作り)の道へ転向。薩摩川内市の農家さんや農業大学で泊まり込みで学びを深め、現在はとうもろこしや人参などの生産をはじめ、かつおコーンなどの加工も行っている。

2人が頴娃町で今の暮らしを始めた経緯

頴娃町でお茶農家の次男として生まれたゆうせいさんは、高校卒業後、大手ガラスメーカーに就職し、愛知県へ引っ越します。

強化ガラスを作る仕事におもしろさ感じつつも、リーマンショック前後の社内の雰囲気にだんだんと違和感を持つようになり、3年ほど働いた後は地元へ戻ることに。Uターン当初は、家業であるお茶農家を継ぐつもりで、お茶の栽培に取り組みます。

ゆうせいさん:

親戚から瀬谷(せだに)集落は長男じゃなくて、次男が後を継ぐ風習があると聞いていたので、就職で町外に出た時も「いつかは地元に帰ろう」という気持ちを持っていました。10〜20%くらいは、親に対する恩返しの気持ちもありました。

3年ほどお茶の栽培に取り組むものの、元々お茶をあまり飲んでいなかったことや、そもそもお茶が好きではなかったことから「もっと好きなことをやろう」とお茶の仕事からは手をひき、園芸(野菜作り)の道へ進むことに。

野菜作りの知識は、薩摩川内市で合鴨農法などを行っている農家さんの元を訪ね、泊まり込みで勉強。さらに農業大学に入学し、学びを深めました。

現在はとうもろこし、ヤングコーン、スイートコーン、西洋ニンジンの栽培、収穫と並行して、通年でかつおコーンなどの加工も行っています。

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続いて、ちかさん。

旅行会社で働きたいという思いを叶えるために、高校卒業後は大阪にある旅行系の専門学校の夜間部に進学しました。

ちかさん:

うちの親は進学したり県外に出たりすることに対してあまりよく思わない人だったので、学費を自分で払って自活しながら通えるところを探しました。

入学後はホテルや添乗員の仕事をしながら、夜に学校に通う生活を2年間。卒業後は、新卒で電鉄系の旅行会社に入社し、3年半ほど働きました。

夢描いていた旅行会社で働く生活は順風満帆かと思いきや、数字やノルマに追われる日々の中で、少しずつ疑問が湧いてきます。

ちかさん:

この仕事、自分は後何年ぐらい続けるんだろう? 60歳まで今の仕事を続けると考えた時に、楽しそうなイメージが湧かなかったんです。

そんな思いを抱えていたある日、旅行会社での仕事の中で地域で暮らしながら観光に携わる人々と出会います。

そこで旅行会社の立場ではなく、地域で暮らす1人の人間として観光に関わる方が自分に合っているのでは? と考え、高知県安芸(あき)市の観光協会に転職することに。

当時の高知県は、大河ドラマ 龍馬伝の放送が始まる前。転職後は、大河ドラマ館の運営や現地を巡るツアーの企画などを行い、その中で地元の人たちと一緒に作りあげる、地域に根差した観光の奥深さを実感しました。

そして「地域を大切にした観光を一生やっていきたい」という思いと共に、鹿児島県へUターン。数年間、いちき串木野市の観光協会で経験を積んだ後に、2015年から頴娃町で暮らしはじめました。

現在は”頴娃を暮らすように旅をする”をコンセプトに「暮らしの宿 福のや、」を経営。また農家の嫁として、食品加工・販売なども行っています。

夫婦の仕事の関係は「工場長」と「営業ウーマン」

家業であるお茶の栽培から自分がやりたい野菜作りの道へ進んだゆうせいさんと、地元に根差した観光を目指して頴娃町の暮らしを大切にしながら宿を経営するちかさん。

2人は夫婦になってからも、それぞれ好きな仕事を続けています。時には一緒に仕事をすることもありますが、その時の2人の距離感は夫婦の時とは少し違います。

ゆうせいさん:

一緒に仕事をする時は、僕が工場長で、彼女は営業ウーマンみたいな感じかな。僕が野菜を作って加工して、彼女がそれを売りにいく。

ちかさん:

同じ領域で仕事をすると絶対に揉めるから、仕事内容は完全に分けています。

編集部:

喧嘩になるから、あえて分けているということですか?

ちかさん:

そうそう。仕事内容も分けているし、相手に対して「こんだけやってあげているのに」って思うと絶対に喧嘩になるので、私たちはお互いに賃金を支払う形を採用しています。基本的には私が雇われて畑の仕事を手伝ったり、かつおコーンなどの加工品を作ったりすることが多いですね。

農家のお嫁さんというと、良い意味でも悪い意味でも家族として入りこんでしまって、仕事を手伝う時は無償で、というイメージを持っていましたが、2人の場合はお互いに賃金を支払う関係をとっています。

さらにその関係性は、夫であるゆうせいさんだけでなく、ゆうせいさんのお父さんやお兄さんも同じように、ちかさんに仕事を手伝ってもらう時は賃金を支払っているようです。

ゆうせいさん:

どちらが良いということではないですが、うちの場合は強制はしないですね。やりたければ、やる? という感じ。

ちかさん:

志願制だよね。今日どうする? と聞かれて、どうしようかな? と。「家族なんだから、お願いね」と強制されることが全くないので、自分の向き不向きも考えながら、楽しんで仕事ができています。

いかにもな夫婦像を求められるのは嫌

これまでは主にちかさんの活動がメディアで取り上げられることが多く、そもそも表に出るのがあまり好きではないゆうせいさんは、取材自体、積極的に受けていませんでした。

そんな2人を同じタイミングで取材できる貴重な機会に、我々編集部から、こんな質問を投げかけてみました。

編集部:

ちかさんから見たゆうせいさんと、ゆうせいさんから見たちかさんについてお聞きしたいのですが……。

ちかさん:

ゆうせいくん、そういうの嫌いだよね。仲がいい夫婦ですね〜って言われたりするの。「もう、そんなのどうでもいいんだ〜!」って。

ゆうせいさん

仲良いな〜みたいなのが前に出るのが、なんか嫌なんだよね。

ちかさん:

後、あれだよね。夫婦二人三脚で〜みたいなのも。「俺は俺だ〜!」って。

ゆうせいさん:

そんなん知らんよ〜ってなるね。

編集部:

仲は、良いんですか……?

ちかさん:

仲は良いよね。動物たちみたいな。同じ部族が一緒に暮らしてるような感じ。気を張らずに過ごせるね。

お互いについて、良い評価しかしなくなったらお終い

ちかさん:

仲は良いんだけど、お互いについて良い評価しかしなくなったら終わりだと思っていて。他の人から見て「どうなんだろう?」ということを第三者が言えない場合は家族が伝えないといけないのに、お互いが「相手の全部が好き!全部良いぜ!」みたいになって何も言い合えなくなったら、ヤバいでしょう?

ちかさん:

一番指摘し合える関係じゃないといけないのに、馴れ合いすぎてお互いがダメになるのは嫌だなって。例えば商品開発中に誰かに試食してもらって、その人が「ん?」と思ったとしても、きっと中々言えない。でも私だったら「これエグみ強くない?」って素直な感想を伝えられるし、それがもっと良い商品を作ることに繋がる。

編集部:

じゃあ、お互いに気になるところは、けっこう指摘し合うんですか?

ちかさん:

わたしは特に言うよね。後から「あの時こう思ってたのに」ってモヤモヤするより、リアルタイムで伝えた方がいいと思うから。

編集部:

そんな時、ゆうせいさんはどんな顔で聞いているんですか?

ゆうせいさん:

死んだような顔で……でも言ってくれた方が、こっちもありがたいからね。言ってもらうことで気づけることもあるから。

ちかさん:

あんまり辛いとギスギスするから言った後は「ごめんねっ」て。そしたら、ゆうせい君が「いいよ〜」って返してくれるね。

編集部:

ちかさんからゆうせいさんに伝える内容は、どんなことが多いですか?

ちかさん:ほとんどは仕事のことだよね。車でどこかに出かける時も、「あれは違うと思う」「それは嫌だ」と、ずっと仕事の話をしています。

ゆうせいさん:この前話したのは、僕が大河ドラマが好きで。「ドラマを見たいから、NHKオンデマンドに登録しようと思うんだけど」って提案しましたね。仕事以外の話題だと、最近はそれぐらいかな?

あの頃の自分に語りかけるとしたら?

仲の良い夫婦でありながら、それぞれが好きな仕事をやり続ける。

傍目からは見えにくかった2人ならではの距離感が、インタビューを通して見えてきたような気がします。

編集部:

さいごに、今を生きる2人から「あの頃の自分に語りかけるとしたら」どんな言葉が思い浮かびますか?

ちかさん:

「自分が思っているほど、人はあなたのことを見てないですよ」かな? 人に嫌われたくないとか、どう思われているんだろう?ってすごく人目を気にしてた時期があったから、その時に「他人はそんなに気にしてないよ」って言われていたら、すごく楽になったかもしれない。

ゆうせいさん:

今が楽しければいいよ、かな。

編集部:

未来への不安は、あまりないですか?

ちかさん:

ゆうせいくんは「明日死ぬかもしれないんだよ」ってよく言うよね。

編集部:

今を生きている感じが良いですよね。それが多分、人間本来の生き方なんですよね。

ゆうせいさん:

だけど、それほど頑張ってない。そういうことを言う人って、すごく頑張って一日一日を生きているけれど、自分はそういうわけではなくて。一日一日を大事にしないけど、好きなことをやって今を楽しく生きれたら良いと思ってる。ちょっとヤバい奴なのかもね。

関連リンク

  頴娃を暮らすように旅する。 – 鹿児島県南九州市頴娃町の暮らしの宿 福のや、  


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かざり

かざり

2019年6月より頴娃町に移住。普段はブロガ〜/町のレコーダーとして「わたしと町の研究所」をコンセプトにブログONESELF Labを運営したり、寄稿したりしています。好きなドリンクは、赤いコーラです。